主人公木藤亜也は、徐々に体が動かなくなってゆき、やがて体の全機能が停止してしまう難病「脊髄小脳変性症」に、中学3年生の時に罹った。その木藤亜也が、21歳になるまで書き続けた日記をもとにストーリー化された。

亜也が中学3年のある日、いつものように通学のために元気に家を出た亜也は、その途中、転んでしまい、下顎を強打した。急いで行った近所の病院で、母・潮香は医者から意外なことを聴く。普通、人が転ぶときには、手が先に出て、顎を打つようなことはあまりない。一度、設備のある病院で診てもらった方がよい、と医者が勧めた。何か他に原因があるのではないかというのだ。
勧められて検査に訪れた病院で担当した山本紘子医師に、潮香は事実を告げられる。亜也の病気は「脊髄小脳変性症」だという。悪くなることはあっても決して良くなること、現在では不治の病だという。衝撃を受ける潮香。高校受験を目前に、不安と希望を抱えた娘・亜也を看て、潮香は決意する。この子の残された命を充実したものにするのが自分に出来る唯一のこと、出来るだけのことをしよう。
亜也は、目指した進学校・豊橋東高校に見事合格、晴れて高校生となった。親しく接するようになった山本先生の勧めで、元々書くことの好きな亜也は、日記を付け始めていた。高校生活は、山本先生の言うように、病状の進んだ亜也にとっては楽なものではなかった。
亜也の高校生活は、友人となった沙織と裕子の助けが必要であった。
夏休み、亜也は初めての入院生活に入った。検査漬けの毎日、同病の進行した患者を目にして、初めて自らの病気を知る亜也。退院の時、亜也は、山本先生に聞く、「例え歩けなくっても出来る仕事、あるよね」。

高校生活に戻った2学期、亜也は生徒手帳の他に三級障害者手帳を持つようになっていた。ある日、下校の時、先輩で生物部に属している幸子に声をかけられ、一緒に帰ることになった。幸子は、「障害を気にするな。人に助けてもらえ」という。そうして二人で歩いている時、亜也は再び転んでしまう。助け起こそうとする幸子、その光景を見ていたパン屋のハルが駆けつけた。亜也が怪我をしたとの知らせに、飛んできた潮香に、ハルが言う。「仕事で、下校時間に迎えに来られないのなら、来られるときまで、自分の店で亜也を預かる。」亜也に「お母さん。私のために仕事、やめないで」、と言われて、潮香はハルの好意を受け入れる。
ハルの店でひとり迎えを待つ亜也。幸子や友達の沙織、裕子も時々寄って話してゆく。
潮香も父の瑞生も亜也がいつまで、高校へ通えるのか、不安を感じていたある日、亜也の担任の野村先生が木藤家を訪れた。「本校には、三級障害者に適した設備がない。他にもっと適した学校があるから…」その会話を聞いた亜也は、来るべき時がきたと悟りながらも、母の前で号泣した。亜也は、涙を流しながら、転校を決意する。「私は東高を去ります…、なあんてかっこいいことが言えるようになるには、一リットルの涙が必要だった。」

豊橋東高校を去る日、涙する友達に、今までの親切に感謝する亜也をクラス全員が見送ってくれるのだった。
亜也の第一養護学校での寄宿生活が始まった。同室は温子、純、絵美の三人、寮母のさとは、生徒たちに容赦をしない厳しい人だ。それでも、亜也はすがすがしい気分で、大学を目指し勉強に励んだ。そんな望みも病気は潰してしまう。
養護学校の高等部で、日頃の成果として、演劇の発表会が開かれることになった。亜也も裏方の一人として参加することになった。準備も進んだある日、亜也たちが作業をしていると、突然、さとと温子が口論を始めた。絵美が舞台衣装を担当していたのだが、不自由な体はままならず、さとに助力を求めたところ、「自分の力でやりなさい」と一蹴されたのを温子が見て、抗議していたのだ。その夕、亜也と純が作業を終え寮に戻ろうとするとき、ひとり作業を続ける絵美を見つける。「最後までやらないと…」という絵美に、手伝うふたり。温子も加わり、夜なべ作業が始まった、そんな四人の姿を遠くから優しく見守るさとの姿があった。
発表会当日。広い客席は人で一杯だ。亜也の家族もいる。そして盛大な拍手で幕が下ろされた。演劇発表は大成功を収め、亜也たち障害者が、いつもは参加すら出来なかったことをやり遂げた喜びは、大変なものであった。その喜びは、今まで厳しく接していたさとにとっても、この上ないものであった。
亜也は、リハビリにために入院生活を送っていた。せめて、リハビリをすることで病気の進行を抑えようと言うのだ。見舞いに来た母潮香は亜也に言う、「失われた機能なんかに未練を残さず、残された能力に…」。潮香は、亜也に書くことを勧める。

退院した亜也の生活は、家族が仕事や学校に出かけた後はひとりで過ごすこと。声も細り、病魔は着実に亜也を取り込んでいく。
再び入院。一生懸命リハビリをする亜也の姿に、ほかの患者さんたちは、とても親切に亜也を気遣ってくれた。それでも、すでに亜也は、電話すら掛けられなくなっていた。家族との連絡が自分からはもう取れなくなったのだ。
そんな中、亜也は研修医・小林に淡い恋心を抱くのだが、亜也には叶わぬ夢であった。亜也は、山本先生に聞くのだった、「先生…私…、結婚できる?」、山本先生は言葉に詰まるが、答えて言う「出来ないと思う」。亜也は山本先生に言うのだった「先生ありがとう…本当のことを教えてくれて、ありがとう」。
木藤家に戻った亜也の部屋は、何かと便利な一階に移され、介護ベットが置かれていた。亜也は考える、「私は何のために生きているのだろう」
ある日、亜也は、潮香に日記を託す、それが、亜也が生きてきた証だとも言うように。潮香は、夜を徹して、一気に読んだ。そこには、娘亜也の苦悩と悲しみと生きている喜びとが書かれていた。読みながら泣き声を殺し嗚咽する潮香の肩に、そっと手を置く瑞生。
亜也は、21歳になった。もはや自由の効くものは何もない。病床で見舞う母にそれでも力を振り絞って、言うのだった。

「おかあさん、まだ生きたい・・・」

それから四年、木藤亜也、享年25歳であった。
亜也は言う、「ありがとう」
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